違法ダウンロードとは - 改正著作権の詳細を知ろう

トップイメージ:違法ダウンロードとは

2021年1月1日より、改正著作権法が施行され、違法ダウンロードに2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金が科せられるようになりました。違法にダウンロードする人が減れば、違法なアップロードも利益が減り少なくなるのでは、という発想です。有料動画をネットで配信する人とっては、朗報に思えるかもしれません。でも、そうでもなかったりします。

そもそもダウンロードとは

著作権法でいう「ダウンロード」は古風で、いわゆるストリーミング方式におけるダウンロードやキャッシュは含みません。
ストリーミング方式は、ダウンロードしながら再生する視聴方法ですが、再生されたデータは削除されることもあるため、セーフということのようです。また、ファイルを指定してダウンロードせずに、オンライン上で視聴する場合、キャッシュは残りますが、これもセーフとなります。

文化庁 違法ダウンロードの刑事罰化についてのQ&A

現実的ではない違法ダウンロードの摘発

今回の改正で、著作権法違反は非親告罪となり、権利者でなくても違法行為を告発できるようになりましたが、違法ダウンロードに関しては、親告罪のままです。ですので、違法ダウンロードを摘発するためには、次の3要件がすべて必要となります。

  1. 違反者が違法にアップロードされたものと知っていた。
  2. 1に該当するものを、違反者が視聴するだけでなく、ダウンロードし、保管している。
  3. 権利者が告訴する。

そのため、文化庁によると、次のようなケースは、仮に権利者が告訴してもセーフになります。

〇 違法に配信されている音楽や映像を視聴しただけ。
〇「You Tube」などの動画投稿サイトの閲覧した(違法にアップロードされたとわかっているものも)
〇 友人から送信されたメールに添付されていた違法複製の音楽や映像ファイルをダウンロードした
〇 個人で楽しむためにインターネット上の画像ファイルをダウンロードしたり、テキストをコピー&ペーストしたりした

文化庁 違法ダウンロードの刑事罰化についてのQ&A

さらにトドメとして、文化庁は挙げてはいませんが、次のケースもセーフです。

〇 故意に海賊版サイトから違法ダウンロードしたが、削除した。

セーフ、セーフといってきましたが、この場合、セーフとはあくまで、告訴されても違法性は認められず、刑罰の対象にならないということです。告訴されて、捜査時にデバイスを差し押さえられたり、そのあと、裁判沙汰になったりすれば、有罪にならなくても、社会的に指弾されるかもしれません。
被害者の著作権者は告訴するのに時間も労力も取られる割には、たいして救済が望めないのであれば、ヤケでも起こさない限り、違法ダウンロードで告訴するという状況は考えにくいのではないでしょうか。そもそも著作権者はどうやって違法ダウンロードされていることを知ればいいのでしょうか。

はびこる違法アップロード

じつは、著作権法の改正前から、改正内容には異論が噴出していました。
その最たるものが「既に違法となっているアップロード行為を厳格に取り締まればいいじゃないか」というものです。それに対して、文化庁は、次のように答えています。

アップロード者が特定できなかったり海外にいたりすることなどにより、迅速かつ円滑な権利行使・摘発が困難な場合もあります。また、①侵害コンテンツにアクセスしてダウンロードするユーザーが多数いることによって、アップロード者が多額の広告収入を得られることに繋がるとともに、②ダウンロードした者が更にアップロードして侵害コンテンツを拡散させるなど、ダウンロードがアップロードを助長している面もあります。

文化庁 侵害コンテンツのダウンロード違法化に関するQ&A(基本的な考え方)【改正法成立後版】(令和2年12月24日著作権課)

侵害コンテンツにユーザーが群がるのは、違法アップロードの取り締まりが手ぬるく、違反者に多額の広告料が転がり込むしくみが堅牢で、やりどくだからです。

実際、コロナ禍の巣ごもりでインターネットの利用が拡大した2020年は、海賊版サイトもアクセスを急増させました。

小林 優多郎 巣ごもりで「漫画村問題」が再燃か 「急増ペースが異常、歯止めきかず」…集英社らが危機感

上記記事では、改正著作権法に関わった福井健策弁護士が、「(国は)ダウンロードをした人の摘発をどんどんやっていこうとは思っていない。アナウンス効果の影響が大きいとは思う」と言ったそうです。ほんとうにアナウンス効果があり、それで済むのでしょうか。

今年2021年3月には、人気アニメ『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開されました。そしてそのわずか6日後、エヴァンゲリオン公式アカウントは「盗撮映像がネットに違法アップロード」されており、「しかるべき対処」をするとツイートするとともに、違法アップロードサイトにリンクを張らないようにと呼びかけました。

エヴァンゲリオン公式 ツイート 2021年3月13日

アナウンス効果というのであれば、こういうタイミングで違法ダウンロードはきびしい罰則が科せられていることを注意喚起するところではないでしょうか。それをしないのは、やはり違法ダウンロードの条項ではクリエイターを守れないから?

YouTube は有料動画配信に向かない

話は変わって、有料動画を配信する人が違法ダウンロードを防ぐのにはどうすればいいか考えます。

YouTube には限定公開というモードがあります。このモードでアップロードすると、動画が検索対象から外れ、原則、URLを知っている人しか閲覧できません。このしくみを利用して、支払した人にのみ、URLを送ることで、有料動画配信をしている人がいます。
残念ながら、これは悪手です。

URL がもれたら、タダ見されます。
さらに、ダウンロードサイトで、動画ファイルをダウンロードされます。
その動画ファイルがアップロードされれば、被害が拡大します。
ちなみに、アップロードは完全にクロですが、ダウンロードサイトでダウンロードすることを「違法ダウンロード」と認定することはむずかしいかもしれません。
無料のYouTubeの動画をダウンロードすること自体は、「違法ダウンロード」ではないので、動画が有料であると知らなかった場合は違法性を問えないのではないかと思います。ただし、YouTubeの規約違反ではあります。

有料動画配信をするには

やるべきことは2つ。

1. 動画の権利者を明確にする。
2. 自社サイト内で公開する。

動画の権利者を明確にする。

動画にクレジットを入れ、著作権者と著作隣接権者を明記し、連絡先も掲載する。
有料動画である旨を記す。

自社サイト内で公開する。

自社サイトのセキュリティを強化し、簡単にダウンロードされないようにして、動画を配信する。

まとめ

著作権法が改正され、違法ダウンロードに2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金が課せられるようになりました。
しかし違法ダウンロードを立証する要件はきびしく、摘発は現実的ではありません。そもそもは違法ダウンロードは枝葉末節の問題で、話の本筋は、違法アップロードをいかに取り締まるかという点であります。
自社の有料動画は、自社サイトのセキュリティを強化し、配信管理すべきでしょう。

著者紹介

管理人
津田頼子 Tsuda Yoriko

Webデザイナー&フロントエンドエンジニア。
有限会社デジタルエイド代表。

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