ショッピングモールを卒業する時期

トップイメージ:ショッピングモールを卒業する時期

販売機能と集客を期待して、ショッピングサイトやポータルサイトに出店する業者が多いですね。
日本を代表するショッピングサイト 楽天 の会員数が国内で1億以上と聞けば、多少費用が掛かっても出店したくなる気持ちはわかります。ただ問題は、シッピングサイトに集まる会員のうち、どのくらいの人が自社商品を買ってくれるかということです。

ショッピングサイトの利用者数

ニールセンデジタルが2020年7月に発表したショッピングサイトの月間利用者調査結果によると、ショッピングサイトのうち、PCとモバイルの重複を除いた利用者数は、Amazon が5253万人、楽天市場 が5138万人、Yahoo Japan Shopping が2946万人でした。

ニールセン、デジタルコンテンツ視聴率の Monthly Total レポートによる
オンラインショッピングのサービス利用状況を発表

ショッピングサイトは会員でなければ購入できないため、会員数が気になるところですが、この利用者数調査をみると、楽天の「会員数1億以上」はあまりこだわらなくてもいいことがわかります。
ならば、出店コストの安い Amazon にすればいいのか?
ちょっとお待ちください。

ショッピングサイトの落とし穴

ある Amazon の出品者の経験をご紹介します。
その人は自費出版で本を制作し、それを Amazon に出品して売っていました。
さらに、Amazon のアシソエイト・プログラムにも参加し、自社サイトから自分の著作へ商品リンクを張っていました。
つまり、自社サイトに Amazon で売っている著作のショッピングカートがあり、ユーザーはクリック1発で著作が買えるしくみになっていました。

ところが、Amazon のショッピングカートには、他のショッピングサイト同様に、同じ商品があれば、そのすべてを価格とともに表示します。
その人は自分で定価をつけたので、当然、定価で売っています。
しかし Amazon では新古本を扱う業者がいくらでもいて、たとえ自費出版でも流通ルートに乗った本は安値で買い付け、Amazon で古本として売り捌くのです。古本といっても、新品同然ですから、売れます。
その人は、わざわざ自社サイトで、書籍の宣伝をすることによって、他社の利益に貢献するハメになったわけです。(ただし、アソシエイト・プログラムでは、どの業者の本が売れようと、そのきっかけを作ったサイトのオーナーにわずかながら謝礼が入りますが。)

ショッピングサイトは「脇役」を必要とする

先述したように、ショッピングサイトには1カ月で、2900万~5200万超のユーザーが集まります。
ユーザーはサイト内検索等でお目当ての商品を探すわけですが、ずらっと表示される同じような商品から、どれを買うか、すなわち、どの出店者にするかをさらに選ばなければなりません。
そんなユーザーのために、ショッピングサイトは「人気順」とか「安い順」とかで並び替えたり、「口コミ=購入者の評価」を参照したり、はたまた「口コミ」を元にランク付けしたりする機能を提供します。
いわばショッピングサイトは、豊富な選択肢の中からユーザーが「賢い買い物をする」というストーリーを演出しているのです。

この「賢い買い物」ストーリーを成り立たせるためには、「人気抜群」「最安値」「最高評価」になる「主役」だけでなく、それらを引き立たせる「脇役」も必要です。しかも脇役は多ければ多いほどよい。
ですから、ショッピングサイトに出店する店の多くは「主役」ではなく、「脇役」という日陰が割り当てられます。

ショッピングサイトの陰

今は日陰でも、なんとか日の当たる場所に出ようと努力を重ねている出店者も多くいます。
そうした出店者に向けて、広告を出せば、ランク上位に掲載するというポータルサイトもあります。当然、それは不正行為であり、SNS上で叩かれたりもします。まさか大手ショッピングサイトがそのような不正をしているとは思えませんが、悪質な仲介業者がいるらしく、この種の誘惑は後を絶ちません。
一方、アウトソーシングサイトでは、好意的な口コミを捏造する"お仕事"が頻繁に発注されています。

以前、ある美容・健康ポータルサイトが非常に人気を集めていたことがありました。
「美容」や「健康」は、たいていの人が関心を持つ分野で、関連するキーワードはほぼすべてがビッグワードといえるほど、検索ボリュームが大きいのが特徴です。そんなビッグワードのどれを検索しても、検索結果のトップ10圏内に、常にその美容・健康ポータルの記事がありました。
そして、リンクしてみると、わかりやすい写真と記事がカラフルにデザインされ、関連の広告がしっかり張られ、大きな広告収入を得ているのが窺われました。
しかしあるとき、一部の記事で、使われた写真が著作権違反だと指摘されました。それと前後して、記事そのものも無断引用だったり、記事の内容が科学的な裏付けのないものだったりすることが発覚し、それをきっかけに、記事がライターに外注されたもので、内容のチェックが不十分であったことが暴かれました。
そのため、その美容・健康ポータルサイトは検索エンジンで検索結果トップ10には入らなくなり、サイトの閉鎖を余儀なくされました。
その美容・健康ポータルはたいへん羽振りがよかったのに、問題発覚からサイト閉鎖まで、非常に短かったと記憶しています。

いま、隆盛を極めているショッピングサイトもいつ危機に陥らないともいえません。現実にユーザーを裏切るような行為を繰り返えしているのであれば。

ショッピングサイトでの今のポジションに不満な出店者は、ショッピングサイトから出て、自社サイトで集客力と販売機能を強化して出直すという方法もあるのではないでしょうか。

自社サイトの集客力と販売機能を強化

ネット決済やショッピングカートは、ショッピングサイトのような大きなサイトでなければ導入できないほど、高額なシステムではありません。
集客に関しては、ショッピングサイトが苦手とするニッチなキーワードを狙った SEO が有効です。

商品に自信があるのならば、自社サイトで販売機能を強化し、しっかり集客力を付けば、ショッピングサイトに頼らなくても売れるはずです。

まとめ

インターネット通販は、コロナ以前から順調に伸びていました。そしてコロナ禍では、他業種が大打撃を受けるのを尻目に大幅売上増です。といっても、これは大手ショッピングサイトの話。末端の出店者はそれに見合う恩恵に十分浴しているとはいますか?
もし、答えが No であるなら、ショッピングサイトから"卒業"する時期に来ているのかもしれません。

著者紹介

管理人
津田頼子 Tsuda Yoriko

Webデザイナー&フロントエンドエンジニア。
有限会社デジタルエイド代表。

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